アンダルシアを知るための53章 (エリア・スタディーズ110)

本書のはじめにに書いてありましたが、「スペインの代名詞、フラメンコや闘牛はアンダルシア起源のもの。イスラームの建物が多数残っているのもアンダルシアである。」とあり、「ヨーロッパの他の国々と異なる文化・雰囲気をもつ」からこそ魅力的なわけです。本書は、そんなアンダルシア地方の暮らしや文化、芸術などについて、11人のスペインの研究者が分担執筆した本でした。各人の文体の個性はありますので、読みやすさもまちまちですが、できるだけ平易な文体を取り入れようとしているのは感じられました。17ページにアンダルシア自治州の位置関係が分かる地図が掲載してあります。セビーリャ、グラナダ、コルドバなど魅力的な街が点在してあります。観光地としての魅力は抜群ですし、行ってみたいスペインの地域としても上位にあげられる地域です。27ページ掲載してありますが、セビーリャ近郊のローマ時代の遺跡イタリカも2001年に保護をうけるようになったそうです。「都市の魅力―セビーリャ、コルドバ、グラナダ、マラガ、カディス」は上質の観光ガイドのような役割を果たしていました。36ページに紹介してあるグラナダは「イベリア半島における最後のイスラーム王朝、ナスル朝が繁栄した町」だそうで、美しいアルハンブラ宮殿で良く知られています。観光地であるとともに、歴史上の拠点ですので、成り立ちを知ることで、街の魅力が倍加することでしょう。「アンダルシア的な暮らし―独特な時間の使い方、人生を楽しむこと、家族」に詳述してありますが、8時の始業、午後は2時でいったん昼休み、昼食を取りに自宅へ帰り、4時に再び職場へ行き、7時か8時ごろまで働くそうで、効率的な働きではない生活に、逆に人生の楽しみ方が垣間見えそうでした。「都市の若者たち―厳しい雇用状況との闘い(99ページ)」では、若者の月給が1000ユーロ前後だと書かれていました。ユーロ導入後、物価が高騰し、これでは生活が成り立たないのも無理はありません。スペインで仕事を見つける難しさも書かれてありました。厳しい現実を知る思いです。159ページからの「フラメンコの創造―『ジプシーの踊り』から世界遺産へ」「フラメンコとカンテ」に日本人にも関心を寄せられているフラメンコ(日本は世界第2位のフラメンコ人口を抱えるそうです)について詳述してありました。このジプシーを起源とするフラメンコの成り立ちも諸説あり、伝統の根拠も研究が進むにつれ明らかになっていっているようです。「アンダルシアの世界遺産」には「アルハンブラ宮殿―イスラームの栄華の最後の輝き」「コルドバのメスキータ―アーチと列柱の無限の反復がつくり出す祈りの空間」「セビーリャのカテドラルとアルカサル―カトリック信仰とイスラーム建築の混淆」「ウベダとバエーサ―スペイン・ルネサンスを継承する二つの町」「ドニャーナ国立公園―多様な生態系」などが書かれてありますので、観光される前に本書を一読されると感慨も深いものとなることでしょう。